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スタート 関東地方

「こども食堂スタート応援助成プログラム」を使って新たに立ち上がった「日吉本町ひっぽ食堂」にファミリーマートさんと訪問しました

(右)日吉本町ひっぽ食堂 佐藤藍子さん(神奈川県横浜市) (左)株式会社ファミリーマート マーケティング本部 サステナビリティ推進部 CSR・ダイバーシティ推進グループ 大橋 結実子さん
名称
日吉本町ひっぽ食堂
開催場所
横浜市港北区日吉本町
開催頻度
毎月1回 第2土曜日
(右)日吉本町ひっぽ食堂 佐藤藍子さん(神奈川県横浜市)
(左)株式会社ファミリーマート マーケティング本部 サステナビリティ推進部
CSR・ダイバーシティ推進グループ 大橋 結実子さん

~こども食堂スタート応援助成プログラムとは~

「ファミリーマート 夢の掛け橋募金」をもとに、こども食堂を新たに立ち上げる際に必要な費用を助成するプログラムです。2023年にスタートしたこの助成金プログラムは、「こども食堂を新たに立ち上げる団体」を対象に必要となる費用の助成を行うほか、こども食堂の立ち上げに関するオンライン勉強会も実施しています。

以下のインタビューでは、第一回目の「こども食堂スタート応援助成プログラム」を利用して、新たにこども食堂を立ち上げた、日吉本町ひっぽ食堂の代表・佐藤 藍子さんと株式会社ファミリーマート マーケティング本部 サステナビリティ推進部の大橋結実子さんの対談インタビューをお届けします。

これからこども食堂を始めようか迷っている方や、「こども食堂スタート応援助成プログラム」に申請しようか迷っている方は、ぜひご一読ください。

――本日は日吉本町ひっぽ食堂さんに参加させていただきましたが、とてもにぎやかな雰囲気でしたね。

佐藤さん:今日は本当ににぎやかで参加者も多く、楽しい雰囲気だったなと思います。今回で7回目なのですが、一番にぎやかだった回かもしれません。

終始たくさんの参加者で賑わっていました

大橋さん:多世代の方が同じ場所に集って楽しそうにしていて、ボランティアの方も楽しそうにコミュニケーションされている様子が印象的でした。素敵な場所づくりをされていますね。「日吉本町ひっぽ食堂」というネーミングもユニークですが、由来は何でしょうか?

佐藤さん:2つの意味があるのですが、ひとつは地名です。日吉本町の日吉の「ひ」と本町の「ほ」を合わせています。もう一つは「Hippo=カバ」。来てくださった方に、大きい口を開けてたくさん食べていただきたいなという想いを込めました。

――素敵なネーミングですね!それでは最初に、佐藤さんが「こども食堂を始めたい」と思ったきっかけについて、教えてください。

佐藤さん:それまで地域とのつながりがなかったのですが、姪が生まれたのを機に子どもの目線で地域を見るようになりました。この地域にはプレイパークや子育て相談などの拠点があるものの、コロナの影響でお祭りやイベントが減ってしまい「地域の人たちと子どもたちのかかわり」自体は薄くなっているのではないかと感じていました。

そんななか、ある日姪と一緒に帰ってきた子どもが、突然私に「ねえねえ、ちょっと聞いて!」と学校であった嫌な出来事について、ワーッと話してくれました。「うんうん、大変だったね」と話を聞いてあげた後は、スッキリとした表情で帰っていったのです。そのときに「これだ!」と。私自身が「子どもたちの知っている地域のおばちゃん」になり、子どもたちの何気ない話を聞ける存在になりたいと思ったんです。地域の大人が子どもとつながりを作る場として「こども食堂」を立ち上げるのがよいのではないかと思いたちました。

多世代が集まる食堂でみなさんに優しく声をかける姿が印象的だった、運営者の佐藤さん

――実際にこども食堂を始めてみて、いかがですか?

佐藤さん:まず、私自身がとても楽しんで取り組めています。またボランティアさんから「活動できる場を探していたけれど、場所がなかった。活動できる場所ができてうれしい」という声があり、参加者の方からも「こういう場所ができたらいいなと思っていたので、作ってくれてうれしい」などの声をいただくことができました。この地域にこども食堂が求められていたとわかり、思いきって始めてよかったなと改めて実感できました。

――始める前に苦労したのはどのような点でしょうか?

佐藤さん:一番大変だったのは「仲間集め」です。それまで地域にはほとんど知り合いがおらず。当初は、私の家族が手伝ってくれる予定だったのですが、助成金を申請しようにも、単体家族はダメという条件が多いとわかり、団体として継続するには家族以外のメンバーを集める必要がありました。でも同じ志の人が近所にいるのかもわからず、どこに行ったら仲間づくりができるのかがわからない。活動にあたって「私という人間を信じてもらうにはどうしたらいいんだろう?誰に相談したらいいんだろう?」と数か月間、途方に暮れていました。

そこで思いきって外に出て、他のこども食堂にボランティアとして参加してみたところ、ボランティアの一人がちょうど私の近所に住んでいると代表の方が教えてくださり、その方が会場に来るや否や、「こども食堂を一緒にやりませんか?」と声をかけました。初対面で、会って30秒くらいのことだったので、その方はビックリされていたんですけど(笑)。想いを伝えるうちに「やりましょう」と言って一緒にメンバーになってくださり、旦那さんと娘さんも加わってくださることになりました。また以前勤めていた会社の先輩も私の想いに共感してくださり、仲間になってくれました。

素敵なのれんはボランティアスタッフの手作り!

――一人目の仲間ができたことが大きかったのですね。そこからさらに、地域のつながりが生まれていったのでしょうか?

佐藤さん:はい。さらに、ボランティアに参加した地域活動の場に日吉本町地域ケアプラザさん(ひっぽ食堂の会場)と区の社会福祉協議会の方も来ていて「私もこども食堂をやってみたいと思っているんです」と話したところ、そこから一気につながりが広がっていきました。

この地域で長年子育て支援をしている方々に声をかけてくださり、17人くらい会議室に集まっていただいて、緊張しながらも一生懸命に想いを伝えました。すると「こども食堂ができればいいなとずっと思っていた。やりたいなら協力するよ」などと皆さんあたたかく迎えてくださって。そこからつながりがつながりを生んで、どんどん仲間が集まってきてくれるようになりました。一人では絶対になしえなかったと思います。地域の皆さんのバックアップのおかげで、こども食堂を始めることができました。

『子育て支援ポコ・ア・ポコ』事務局の神島理惠子さん(右から2番目)は、佐藤さんを地域の方へつないでくださった方のひとり

――今回で7回目ということですが、継続する中で、参加者の変化を感じたエピソードはありますか?

佐藤さん:大人と話すのが苦手で、対面すると下を向いてしまうお子さんがいたのですが、3回目くらいのアンケートで「今まで下を向いていた子どもが、ここでは、一人で席を立って『おかわり!』と言いにいけるようになっていて驚きました」とお母さんが書いてくれました。ひっぽ食堂にいるボランティアさんが優しく迎えてくれることでお子さんの心が溶けて、「大丈夫、話せる」と変わっていったのが感じられ、すごくうれしかったですね。

大橋さん:ファミリーマートの一部店舗で行っている「ファミマこども食堂」でも普段はなかなかお母さんから離れられないお子さんが、気がついたら色々な人と打ち解けていて安心した、などというエピソードはよく耳にします。こども食堂があたたかく優しい場所だからこそ、子どもたちも心を開くことができるんだろうなと佐藤さんのエピソードを聞いて改めて感じました。

――1年後、どのようなこども食堂になっていたいですか?

佐藤さん:ここに来ている子どもの成長を、みんなで喜べる食堂でありたいですね。またボランティアと参加者の隔たりもなく、距離の近い子ども食堂になっていけばいいなと思っています。小さい子も「私もお手伝いしてみたい」と言ってくれています。今はまだ難しくても、大きくなったら食事をした後、付けを手伝ってから帰るようになるかもしれませんね。

大橋さん:今日も中学生がお手伝いをして「おかわりどうでしょう?」などと大きな声で回っていて、見ていて微笑ましかったですね。すごく楽しんでやっているから、一緒にいる人たちも嬉しい。垣根をうまく壊してくれる役割をしてくれていて、本当に素敵だなと思いました。

初回から皆勤賞で参加をしているボランティアスタッフの女の子とファミリーマート・大橋さん

――運営する上で大切にしていることは?

佐藤さん:ボランティアもお食事に来られる方も、みんなが嬉しくて楽しい気持ちになるよう心がけています。初対面でも集まるとだんだん打ち解けてきて、趣味の話を始めたり、10代と80代が議論していたり、子育て中のママたちが話していたりと、会話が弾んでいます。ここに集う皆さんがつながっていくのはすごく嬉しいこと。みんなが楽しく、優しく関われる空間づくりを目指したいと思っています。

――今回、ファミリーマートさんの「こども食堂スタート応援助成プログラム」を活用いただきましたが、最初に知ったきっかけは何でしたか?

佐藤さん:こども食堂について調べるなかでむすびえさんの存在を知り、ホームページから助成金情報にたどり着きました。仲間がなかなか見つからなくて。資金面も心配で迷っている時期でしたが、私がこども食堂を始めようと思っている期間に、タイミングよく募集が始まると知り「こういう支援があるなら、大丈夫。こども食堂をやってみよう」と背中を押してもらいましたね。

――大橋さん、「助成金がスタートの後押しになった」と伺って、いかがですか?

大橋さん:「新たにこども食堂をスタートする人」だけを対象にした助成金は、初めての試みでしたので、本当に応募していただけるのか我々も不安だったのですが、あたたかい場所づくりのお手伝いができたことを、本当に嬉しく思っています。申請は大変だったのではないですか?

佐藤さん:熱い想いが募っている時期だったので「自分がどうしてこども食堂をやりたいと思ったのか?」など、たくさん書かせていただいたと思います(笑)。書くことで、ふわっとしていた気持ちを言語化して整理することもできました。

――すごろくの動画(※)はご覧になりましたか?

佐藤さん:視聴しました。その時すでにコマの途中まで進んでいたタイミングだったので、1マス目から自分が大変だったことや悩んだことなどを振り返りつつ、「これから考えなければいけないこと」や「すっぽり抜けていたこと」もインプットでき、とても役立ちましたね。もっと早く観ていたら、最初の1マス目から一緒に歩んで行けたのにな……と悔しく思うくらい、運営者の気持ちに沿っている動画だと思います。これから始める人は、絶対に視聴することをおすすめします。

「こども食堂スタート応援助成プログラム」では、こども食堂立ち上げ勉強会を開催しています。動画「はじめよう!こども食堂 ~すごろくでわかるヒント、アイディア、アドバイス~」では、すごろく形式でこども食堂をスタートさせるまでのプロセスをご紹介しています。

――最後に佐藤さん。こども食堂を始めたいと考えている方への激励メッセージをお願いします。

佐藤さん:これから始める人は「本当にできるのか?」と不安で悩んでいることと思います。私も一人で悩んでいる時期があったのですが、外に出て行くことで色々な人に想いを伝えられ、偶然の出会いが広がって、一歩一歩実現に向かうことができました。一人で悩まず、外に出ていくと自然に仲間が集まってくると信じて、挑戦していただきたいなと思います。

――続いて大橋さん。「こども食堂スタート応援プログラム」へ応募しようか迷っている方に向けて、一言をお願いします。

大橋さん:ファミリーマートでは、佐藤さんのように「地域のために何かやってみたい」という想いのある方の後押しをして、一緒に地域を元気にしていけたら嬉しく思います。助成金プログラムを通じて、こども食堂を始めたい方の最初一歩をサポートできたらと思いますので、ぜひご応募ください。たくさんのご応募をお待ちしています。

――佐藤さん、大橋さん、ありがとうございました