子どもだって決して自由ではない—つくりたかったのは“のびのびと遊べるこども食堂”

我が子の夏休みから見えた、子どもたちの不自由…「だったら僕が居場所をつくればいい」
――こども食堂を始めたきっかけを教えてください。
きっかけは、小学生になった息子が夏休みに友達と遊びたくても遊べずに、困っていたことです。
息子が通う学校では、親がいない時間に家に友達を招くことは禁止されていて、友達同士で家の行き来が自由にできません。だったら外で遊ぼうと思っても、夏休み中は猛暑で長時間遊ぶことは不可能です。
他にも習い事に追われて遊ぶ時間がなかったり、スマートフォンを持っている子どもたちだけのグループがあったりと、現代の子どもたちが”一緒に遊ぶ”には、さまざまな壁が存在すると知りました。
こうした壁を打ち破るため「子ども達が自由に遊べる場所」の提供を考えるなかで、こども食堂の立ち上げに至りました。
実は数年前からこども食堂には興味を持っていたのですが、自分にはできないと考えていました。しかし、息子が不自由の色合いを強めているのを見て、こども食堂に遊び場機能を加えて開催しようと決めたのです。「息子が喜ぶ場所であれば、きっと地域の子どもたちにも喜んでもらえるぞ」と。
――立ち上げに至ったお気持ちは「永山ホビーキッチン」という名前にも表れているように感じます。
そうですね。「子どもたちに遊べる場所を提供したい」という思いを込めて名付けました。また「永山ホビーキッチン」に協力してくださっている模型専門店「ホビーショップてづか」の「ホビー」を拝借しました。。「ホビーショップてづか」には息子が車にハマっていた時期に通い始めたのですが、店長や店にやってくる大人とどんどん仲良くなる姿を目の当たりにし、先生や自分の両親以外の「大人」との関係は、子どもにとって特別なものだと感じました。「永山ホビーキッチン」も、遊びと食事を通じて「地域の大人と子どもが自由に交流できる場所」を目指しています。

――実際にこども食堂をスタートするまでに、苦労されたことはありますか?
古い炊飯器の使い勝手が分からないところから始まり、こども食堂を始めるにあたって準備しなければならないことの多さを痛感しました。そんななか、旭川エリアのこども食堂を支援している団体「旭川おとな食堂」さんにたくさん相談にのっていただきました。ファミリーマートの「こども食堂スタート応援助成プログラム」も「旭川おとな食堂」さんに教えてもらったのです。
「こども食堂スタート応援助成プログラム」の助成自体も非常にありがたかったですが、むすびえとのつながりをきっかけに、分からないことがあったら聞ける相談先が増えたことも非常に大きかったですね。
――1回目の開催はいかがでしたか?
前日は「こども食堂に誰も来てくれなかった」という悪夢を見て、夜中に目が覚めてしまい、眠れませんでした(笑)。当日の準備は、些細なことにも右往左往していましたね…。ただ、協力してくれた方のお名前を黒板に書くなど、感謝をしっかり伝える姿勢を大事にしました。
スタート後も僕自身は終始ワタワタしていたのですが、そんな姿を見かねて「これやっておくよ」と参加者が協力してくれたのは大変ありがたかったですね。
1回目終了後は「身の丈以上のことを始めてしまったのでは…」と少し後悔していたのですが、2回目からは心に余裕が生まれ、楽しめるようになりました。回を重ねる毎に、自分自身も成長を感じています。


――参加者からは、どんな声が届いていますか?
参加者からは「子どもが家では牛乳や卵を絶対食べないのに、この空間だと食べられる」「恥ずかしがり屋なのに、永山ホビーキッチンでは他の子と遊んで楽しそうにしています」「来月も絶対行く」などの感想をいただいており、子どもたちにとって意味のある活動になっているとやりがいを感じますね。
また、息子が障がいを持ったお子さんのゲームのサポートをしているのを目にしたときには、子どもたちだけの間で優しいコミュニケーションが生まれたことに良い意味で驚きました。
ーーのぞむくんにとって永山ホビーキッチンはどんな場所?(インタビューに同席していた息子さんに)
ラジコンで遊べるのが楽しいし、友達と一緒に遊べるのがうれしい!友達もみんな「楽しいから、毎回来たい」って言ってるよ。子どもはみんな楽しいと思える場所なんじゃないかな。お父さんは普通の一般人だけど、みんなが楽しく遊べる場所をつくっていることがすごいと思うし、かっこいいなって思ってるよ。

みんなが気持ちよく活動し、「遊び、学べる」こども食堂に
――最後に、今後「永山ホビーキッチン」を継続していくにあたって大事にしていきたいことや、やりたいことがあれば教えてください
「永山ホビーキッチン」に来てくれる方だけでなく、ボランティアさんとの関わりも大切にしていきたいですね。団体の約束事として「できるときに、できる人が、できる分だけ」という言葉を掲げているので、ボランティアの方とは無理なことや嫌なことは素直に言えるような関係を構築し、一人一人が気持ちよく、ずっと一緒に活動できる仲間が増えていくのが理想です。
「永山ホビーキッチン」としては、今後学びの場が提供できたらと考えています。一案としては「子どもハローワーク」。地域の身近な大人たちが社会のいろいろな場所で活躍している話を聞けば、子どもも「仕事についてもっと知りたい」という気持ちが出てくるでしょうし、「どういう仕事に就きたいのか?」を考えるきっかけにもなると思います。何かに興味を持つ種になったら嬉しいですね。
