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継続 関東地方

大好きな白子町をもっと元気にしたい!――地元を想う気持ちから始まった「ばあちゃん食堂」がつなぐ、子どもたちと地域の未来。

代表 片岡 未菜さん
名称
ばあちゃん食堂
開催場所
千葉県長生市白子町
開催頻度
平日開催

生まれ育った大好きな白子町を再び盛り上げたい。こども食堂の立ち上げを決意。

――こども食堂を立ち上げようと思われたきっかけを教えてください。     

大学卒業後、地元から離れて、都内で働いていましたが、家族の介護やコロナを機に2020年頃に地元である白子町に戻り、実家の介護事業を手伝うようになりました。地域資源が豊かで、以前は観光業で栄えていた町なのですが、近年は人口減少に加えてコロナの影響で町がさらに衰退し、消滅可能性都市の一つに指定されるようになってしまいました……。私自身がもともと地域活性化や町づくりに興味があって大学のゼミで学んでいたことや、私同様に、白子町を愛し、地域活性に関心を抱いていた母の存在もあり、「大好きな白子町を元気にしたい」という親子共通の想いが団体設立の原動力となりました。消滅可能性都市と呼ばれる現実に、ただ悲しむのではなく、「自分たちが行動しなければ」と思ったんです。

そして「地域資源を使った町づくりをしたい」と構想を始め、中でもまず優先すべきは「この町の未来を担う子どもたち」だと考えて、こども食堂の立ち上げに至りました。 

――こども食堂ですが「ばあちゃん食堂」という名前がユニークですね。 

 子どもだけでなく誰もが気軽に、まるで「おばあちゃんの家」のように親しみやすい・行きやすい場所にしたいと考えて「ばあちゃん食堂」と名付けました。地域の高齢者の雇用の場としても提供しているので、実際にお料理を作っていただくのは「おばあちゃんたち」です。このネーミングには、おばあちゃんたちと子どもたちの多世代交流の場にもなればという願いも込めました。普段は一般の方もご利用できる食堂として運営しており、食堂が空いている日はいつでも子どもたちは入ってきていいという感じです。今は平日ランチタイムが営業時間なので、一部の子どもだけが来ていますが、土日や、学校長期休み中には部活終わりの子どもたちがばあちゃん食堂に毎日集まってきます!来年度からは営業時間の拡大を予定しており、より多くの子どもたちに「来たいときに来られる場所」を届けたいと思っています。
食事だけでなく、人と出会い、つながり、安心できる時間を増やすことで、町全体が少しずつ元気になっていく。そんな循環を生み出したいです。

代表の片岡さん(左)と食堂を切り盛りする「ばあちゃん」たち

――白子町では初めてのこども食堂ということですが、スタートするにあたって大変なことはありましたか?

周辺の地域には既にこども食堂がありましたので、「白子町にもようやくできたんだ」「こんな場所があったんだ」とさほど違和感なく受け入れられたように感じます。

一番大変なのは「ここにある」と知ってもらうことでした。そのために、まずは町内の小中学校、保育園の子どもたちに向けてチラシを配ってもらいました。また教育委員会の方からお願いしていただき、スーパーやコンビニにポスターを掲示してもらいました。ちょうど私が教えていただいた頃の先生が校長先生になっていて、その頃からの関係性があるのでお願いもしやすかったですし快く告知を受け入れてくださいました。他には、町内の広報に掲載していただいたり、SNSで投稿したり、社協や地域包括から町内の方向けにLINEを配信してもらうなどご協力いただきました。前職のマーケティング会社の同期に「バズらせるコツ」を相談したこともあります。とにかくできることはすべて、やりつくしました。それでも最初の月は6・7人ぐらいしか集まらず……。夏休みにイベントなどを開催し始めて、だんだんと人が集まってくるようになっていったんです。

―― NPO法人さくら「まちネット」としては、こども食堂だけでなく、寺子屋やフードパントリー、まちづくり部など多岐に渡って活動されていますね!

「食べる」「学ぶ」「つながる」を軸に、子どもたちが自ら生きる力を育む場所をつくっています。「マズローの5段階欲求説」で考えると、まず土台となるのは「食べること」だと思うんです。なのでこども食堂では「食事の提供」。次に個々に合わせた「学び」をサポートする学習支援を行い、そして周りの人とつながる機会、居場所があれば、子どもたちが自ら考えて行動する力が備わってくるんじゃないかと。

今は、まわりの人たちに頼らなくちゃいけない子たちも、まずはしっかり食べて、学んで、周囲とつながる力を養えば、子どもたちが「自分で居場所を見つけて生き抜く力」が生まれると信じています。食事提供だけでなく、包括的にサポートしていきたいと考えていたら活動範囲がどんどん広がっていきました(笑)。

夏休み・春休み・冬休みなどの長期休み期間は、特に大勢の子どもたちが来てくれます。こども食堂でおばあちゃんたちとご飯を食べた後は、寺子屋で宿題タイムに突入。今は小学校四、五年生が一番多く、宿題を持ってきて「丸つけて」とか「ここ分かんないから教えて」などと、自分から話しかけてくれる元気な子が多いですね。寺子屋以外にも「世界のテーブルマナー」でグローバルな視点を養ったり、「地域資源について調べよう」などテーマを決めたふるさと教育でシビックプライドを高めたりと、色々なイベントを開催しています。

学ぶことや周りの人とのつながりを通じて「自分自身で生きていける力」を身につければ、自分で居場所も見つけられる。ここでの経験や学びを将来の選択肢にもつなげてほしいと考えています。

子どもたちのために「町をもっと元気にしたい!町の魅力をもっと知ってほしい!」。 だからこそ、地域みんなで力を合わせていきたい。

――ここでの活動に対してどのような反応がありますか?

「現状のままでいいのに」という保守的な声も多いのが現実です。まだ私自身も団体も若いので、一つひとつ着々に実績を積んで周りの方に認めていただき、子育て支援をしている他の団体さんたちと協力しながら、大きなネットワークを作っていきたいですね。

活動前までの私は、どちらかというと新しいコミュニティや初対面で話すのが苦手でしたが、この活動を続ける中で「人と人のつながりが一番強いし、一番重要だ」と実感できました。自分から動いて周りを巻き込みながら、理解してくれる人・仲間を増やしていき、町民全体で意識を上げていきたいと考えています。

 ――利用者の方からはどのような声が届いていますか?何か変化などは感じますか?

食堂には一般の方も来てくれるのですが、高齢者の方も多いので「地域食堂」のような形にもなっています。来てくれた高齢者さんや、料理を作ってくれているおばあちゃんたちがよく言うのは「子どもたちと接すると、すごく元気をもらえる」と。こども食堂でのふれあいを通じて「また来週も来てみようかな」とか「お仕事を頑張ろう」という前向きな気持ちになってくれる方が増えてきたのかなと嬉しく感じています。
また、不登校気味の子もいるのですが「ばあちゃん食堂や寺子屋が唯一の居場所になりつつある」と町の子育て支援課の方からも伺っていますので、そうした子に寄り添える「居場所」になってきていると変化を感じています。

――今後、片岡さんが考えているチャレンジを教えてください。

一年が経ち、想像以上に「白子町に愛着を持っている子ども」がいるのだと知りました。でも結局、大学に進学をしたり就職したりするときには町の外に出るという選択肢をとってしまい、戻ってきてはくれません。おそらく「町の人や環境や自然を好き」という気持ちはあっても、「町にある企業や、地域資源の豊富さ」を知らないことが理由なのではないかと感じています。子どものうちに、できるだけそういった資源にも目を向けさせてゆくゆく地元に戻ってきてもらいたい。もしくは戻ってこなくても、何かしらの形で地域に還元するような大人になってもらえたらと考えています。

そのための第一歩として、7月から「まちづくり部」という取り組みを始めました。中学生と一緒に地域の資源を使って商品を開発して、ふるさと納税の商品にするなど、中学生の目線でまちづくりを行います。第一回目の開催では「白子町の好きなところと、ちょっと不便だなって思うところ」をいくつか挙げてもらったところ、大人ではなかなか思いつかないアイデアがたくさん出てきました。「お祭りとか行った後にチャリンコで家まで帰るのに街灯が少なすぎる。街灯が欲しいっていうのが一番切実な願い」など。こうした子どもたちのアイデアを、大人が全力でサポートして実現させていきたいですね。アイデアを形にする成功体験を積んでほしいと思います。

白子町を好きな子どもたちが「この町の一員であり続けたい」と思えるように。
出て行くことが悪いのではなく、“いつか戻りたくなる町”にするのが私たち大人の役目だと思っています。

子どもたちが笑えば、大人も笑う。
大人が動けば、町が変わる。
私たちは、子どもたちと一緒に「未来をつくる町・白子」を目指して歩き続けます。